PR らしい PR をしなかったアップル

Stevejobs Moneybags

iPhone を機にアップルが大々的な PR 活動をやったのか、そうでなかったのか。iPhone の発表当日に書かれた大変興味深い指摘がある。

Blackfriars’ Marketing: “iPhone Buzz breaks 11,000 for iDay; let the consumer revolution begin” by Carl Howe: 29 June 2007

iPhone を扱ったニュースの数はすごかった。

Carl Howe によれば、iPhone が発表された当日 iDay(米国時間6月29日)には、iPhone がらみのニュースは 11,690 を超えたが、その後もそれを超える数に高止まりし、ハリーポッター・シリーズを超える勢いを見せている。

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これをアップルのマーケティング戦略の勝利といわずして何といおうか。

ところがアップルはほとんど PR らしい PR を行なっていない(Apple’s non-marketing)というのだ。

この点について Carl Howe は、アップルがいわゆる広告宣伝をまったくしなかったという、ウォールストリートジャーナルの Paul Kedrosky の記事(”The Jesus Phone”)を引用している。

Wall Street Journal: “The Jesus Phone” by Paul Kedrosky: 29 June 2007

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情報を小出しに?

で、アップルはどうやったかって? つぎのようにいうひともいる。製品に関する情報を巧妙に小出しにして、消費者やジャーナリストが、つぎの新しい機能は何かと待ちかねるように興味をかき立ててきた、と。大きな明るいタッチスクリーン、その次は本格的ウェブブラウザ。そして、指で使えるインターフェイス。これはなんとしても手に入れなきゃ!

So, how has Apple done it? Some people argue it has cleverly drip-dripped product information to the market, tantalizing consumers and journalists alike, everyone hanging on to learn about the next nifty feature. A big, bright touch screen! A real Web browser! A finger-flickable interface! I gotta get one!

しかし事実はそうではない。アップルは製品情報を小出しにしたりはしなかった。Steve Jobs が1月に初めて説明してみせた iPhone と今日実際に出荷されたものとはまったく変わらない。半年前とは異なった機能があるのではないかと、カバーフローに至るまで細かく調べてみてもそんなものはない。

But this theory is wrong. Apple hasn’t steadily dripped product information. As a matter of fact, the iPhone that Steve Jobs described and demonstrated back in January, when he first announced the product, is pretty much the same as what is being launched today. I am hard-pressed to think of a single material feature in the product that wasn’t announced six months ago, right down to the nifty new way you can scroll through songs.

大げさなキャンペーンなんてなかった

みんなが iPhone を認知するようになるまで特段の活動をアップルがしなかったとしても、こうなったのはアップルが何百万ドルも使った大マーケティングキャンペーンを張ったからだというひともいる。しかし、そんなアップルのマーケティングキャンペーンなんて存在しなかったのだ。アップルは製品を発表しただけで、そのあとなんにもしなかった。やっと先月になって、何本かのテレビコマーシャルを出しただけだ。それも、音楽に合わせた製品のデモにすぎなかった。確かに音楽はすばらしかったが、音楽に合わせて iPhone を見せただけで、大げさな宣伝というわけではなかった。

So if Apple hasn’t teased and tantalized its way to iPhone ubiquity, another theory goes, surely it has been the company’s massive, multibillion-dollar marketing campaign that has done the deed. The trouble is, there is no such multibillion-dollar Apple campaign. Apple simply announced the product, and then did nothing. It has only been in the last month that there have been some television advertisements, and those were merely product demonstrations set to music. Granted, it was nice music, but it was also just an iPhone being put through its paces, hardly the recipe for hype.

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Carl Howe は、アップルが PR らしい PR をしなかったことをドルに試算してみせる。

iPhone について書かれたひとつの記事が 2,500 ドルの有料広告に相当するとすると、11日間で 2億 1700 万ドル、この半年で10億ドル以上の広告宣伝費に相当するという。アップルはこれだけのカネを宣伝費として使わずに済み、その分純然たる利益とすることができたのだ。

さらに Carl Howe は、Paul Kedrosky の説得力ある記事を引用してつぎのように結んでいる。

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iPhone の成功は何故か

何百万というひとびとにまだ発売もされていない大変高価なものを買いたいと思わせることができたのが、広告キャンペーンでもなく、アップルのカルトでも、Steve Jobs のカリスマティックなショーマンシップでもないとすれば、iPhone の成功はいったい何故なのだ。

If it’s not the marketing campaign, nor the cult of Apple, nor the showmanship of the charismatic Steve Jobs, then how has the iPhone succeeded in getting millions of people interested in buying something so expensive that hasn’t even been launched?

みんなケイタイが嫌いだ

その訳をお教えしよう。まずみんなが、ケイタイを嫌っていたことだ。電話をかけるというまるで退屈なことを除けば、インターネットにエンターテインメント、その他なんであれとてもひどいものだった。ケイタイは中途半端でオヤジ的なデバイスだというのが一番当たっているだろう。夕方くつろいだときに着るのに、堅苦しい背広の方が似合うと考えるようなオヤジ的、かつ中途半端なデバイス・・・。ウェブブラウザたるやとんでもなくひどく、スクリーンはださく、インターフェイスに至ってはほとんどさっぱり分からないという代物だ。(iPhone の最も喧伝された機能のひとつである「地図」は、これまでのケイタイにも付いているのだが、どうやればその機能が見つかるのか分からないということなのだ。)

I’ll tell you. First, people hate their cell phones. Other than making phone calls — a downright dreary bit of business — using phones for Internet, entertainment and pretty much anything else has been abysmal. Cell phones are best characterized as crippled, paternalistic devices best suited for people who think straitjackets are comfortable evening wear. They have horrible Web browsers, crummy screens, and obscure-to-the point-of-opacity interfaces. (After all, some of the iPhone’s most hyped features, like maps, are on traditional cell phones as well. You just can’t find the feature.)

電話事業者も嫌いだ

ケイタイだけではない。携帯電話事業者もみんなは嫌いなのだ。嫌い、きらい、キライ、大嫌いなのだ。主だった電話事業者は、サポートと称して機器をコントロールし、ケイタイ固有のソフトでファッショ的にコントロールする。一般的ユーザーの反感と嫌悪を募らせるという点では IRS[Internal Revenue Service:アメリカ内国歳入庁、要すれば税務署のこと:徴税方法がアグレッシブで納税申告手続きが煩雑なことから一般のアメリカ人にとっては悪名高い存在]と同じなのだ。

But in addition to hating their phones, people hate their cell phone carriers. Hate, hate, hate, hate. The major cellular providers — with their ham-handed “support” and fascist control of software that can run on phones directly — are right up there with the IRS in terms of inspiring your average mobile phone user’s disgust and loathing.

消費者が望むこと

かかる消費者にとって、アップルの iPhone は一杯の冷たい水のように爽やかに感じられる。ひとびとはひどいケイタイからも、またひどい電話会社からも解放されたいと望んでいるのだ。自分が望むこと(電話を掛け、楽しみ、情報を得ること)のできるそんなデバイスを選びたいのだ。電話会社が必要と考えるものなんかじゃない。(それは、特定の機能の使用を認める代わりに、その機能ごとに毎月5ドルを徴収することになる。)wi-fi で電話が掛けられ、その結果電話会社なんて必要なくなるような、そんな電話が欲しいのだ。

To such consumers, Apple’s iPhone seems like a cool drink of water. These people want to be liberated either from bad phones or from bad phone companies. They want to choose a device that does all the things they want to do — calling, being entertained, consuming information — not all the things their phone company thinks they should do (and then be charged $5 a month per feature for the privilege). They want phones that make it possible to do calls over wi-fi, to the point that cellular companies could potentially become irrelevant.

マーケットのニーズに応える

iPhone に対して草の根の支持が大きく高まっていることは、革命の気運が盛り上がっていることを意味する。まさに時機到来だ。携帯電話会社は、契約期間を短縮し、特定の会社に縛り付けておく排他性を取り除くべく努力しなければならない。なによりも重要なことは、遂にマーケットのニーズに応えなければならなくなったということだ。さもなくば、iPhone (あるいはその後継機)が彼らの息の根を止めることになるだろう。

The massive upwelling of grassroots support for the iPhone shows that a revolution has been building for some time. Now it’s here. Cell phone carriers are going to have to respond by cutting the length of contracts and eliminating exclusivity, and most important, by finally being responsive to their market. If not, iPhones (or their successors) will finish them off.

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Carl Howe の結び・・・

iDay の到来だ。さあ、携帯電話業界に対する消費者革命の始まりだ!

iDay is here. Let the consumer revolution against the mobile phone business begin.

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参考:

・Blackfriars’ Marketing: “iPhone Buzz breaks 11,000 for iDay; let the consumer revolution begin” by Carl Howe: 29 June 2007
・Wall Street Journal: “The Jesus Phone” by Paul Kedrosky: 29 June 2007
・New York Times: “Eating the iPhone” [editorial]: 29 June 2007

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コメント / トラックバック2件 to “PR らしい PR をしなかったアップル”

  1. Shinji Says:

    アメリカ政府が実施する無線周波数帯のオークションにGoogleが入札の意向…というニュースを読んだりすると、次の段階への動きもあるのでしょうか。

    それにしても iPhone、一度触ってみたいですね(*^o^*)
    私は iPodインターフェイスもどき?なウィルコムの新型WZERO3を先日購入したばかりですが、隔世の感がありますな(^_^;;

  2. ryo Says:

    やはりAppleはWimaxの世界も視野に入れてるんでしょうねー

    (久々にシローさんの翻訳を拝見しましたが、良いですね!これからも楽しみにしてます)

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