アップルの秘密兵器はマックだ

Mac Is Apple

このところ iPhone や iPod の話で持ち切りだ。

しかしアップルの力の源は iPhone や iPod ではなくマックだ、と Fortune 誌の Brent Schlender はいう。

CNN [Fortune]: “Apple’s surprise weapon: Computers” by Brent Schlender: 22 August 2007

     *     *     *

社名の変更

この1月に Steve Jobs は、これ見よがしに「コンピュータ」ということばを削って「Apple Inc.」という社名に変更したが、それは iPhone を初めて披露したイベントのときのことだった。

Last January, when Steve Jobs rechristened his company by ostentatiously excising the word “Computer” and leaving it as simply “Apple Inc.,” he did so during the very same public event when he first showed off the iPhone.

iPod ミュージックプレーヤと iTunes ダウンロードの売り上げが、これまでメインだったマッキントッシュの売り上げを凌駕したもの同じころだった。

It also came right about the time that combined sales of iPod music players and iTunes music downloads eclipsed revenues from Apple’s mainstay Macintosh personal computers.

新しい社名は明らかな事実を認めたもののように思われた。この10年以上にわたって、アメリカ市場の5%(世界では3%未満)にすら食い込むことができなかったアップルの PC ビジネスが、ついに中心の座を追われたという事実を。結局、青二才の分際にすぎない iPod と iTunes Music Store がその分野でマイクロソフトを凌ぐ支配力を発揮し、iPhone ですらトランジスタラジオ以来もっとも騒がれたガジェットとなったのだ。

The new name seemed to concede the obvious: The company’s PC business, which for well over a decade couldn’t garner even 5 percent of the U.S. market (nor more than 3 percent worldwide), would no longer be front and center. After all, the stripling iPod and iTunes Music Store were holding almost Microsoftian sway in their realms, and the iPhone already was the most ballyhooed new gadget since the transistor radio.

     *     *     *

奇妙なことが起きている

しかるに、この数四半期の間、奇妙なことが起きている。アップルはフル回転を続け、iPhone は毎月何千何百と飛ぶように売れているけれど、一番ホットなのはマッキントッシュビジネスなのだ。IDC によれば、6月に終わった四半期では、会社一番の収益を叩き出し、ついには収益率5%の壁を突破したという。

But a funny thing has happened over the past couple of quarters. While Apple has been firing on all cylinders, and the iPhone is selling hundreds of thousands of units a month, its Macintosh business is the hottest line of all. It roared back in the quarter that ended in June to reclaim its status as the company’s largest revenue source and, at long last, break that 5 percent share barrier, according to IDC.

昨年秋以来アメリカにおけるマックの売り上げは、ほかの PC 業界の3倍のペースで伸び、Dell および Hewlett-Packard に続く第3の地位にまでアップルを押し上げた。

Indeed, Apple’s U.S. Mac sales have grown at triple the rate of the rest of the PC industry since last fall, propelling it into third place in the U.S., behind Dell and Hewlett-Packard.

     *     *     *

ゴマメの歯ぎしりか

「ばか騒ぎの宣伝」にすぎないと思うかもしれない。「一桁台半ばのマーケットシェアなんて、ウインドウズ PC メーカー全体と比べればゴミだ」と。しかしマーケット全体を見渡すと、一見ごく小さいアップルのシェアは、ターゲットとなるマーケットセグメントではもっと、ずっと大きいことに気付くのだ。

“Whoop-de-doo,” you might say. “A market share in the mid single digits isn’t even table scraps compared to the combined force of all those Windows PC makers.” But if you parse the market, you realize that Apple’s seemingly min-uscule share is much, much greater in the slices it has targeted.

一例を挙げると、アップルのコンピュータは真の意味でパーソナルだということだ。アップルは常にコンシューマ製品として宣伝してきたし、常にクリエイティブな個人(企業の IT 部門ではなく)を念頭においてデザインしてきた。

For one thing, Apple’s PCs are truly personal. Apple has always pitched them primarily as consumer products, and they’re designed with the creative individual – not the corporate IT department – in mind.

     *     *     *

企業とは無縁、あくまで個人対象

アップルは、企業向けのサーバー市場と競争する素振りすらあえて見せなかった。サーバーの内部デザインは技術的にみれば PC そのものであり、マーケット全体の五分の一を占めている。出版社やデザイン部門を除けば、大企業をターゲットとすることすらなかった。

Apple doesn’t even pretend to compete for the corporate servers that are technically considered PCs because of their internal design; those account for about a fifth of the market. Nor has it ever targeted big business, other than publishers and creative departments.

大部分のマックは一般消費者と学生が購入した。企業の場合と違って、買うかどうかの決定は自分自身がする。NPD の統計によれば、小売りやオンラインではアップルが15%のシェアを占めるといわれる。気の利いた広告宣伝、自前の派手なアップルストアが大いに役に立っているのだ。

The bulk of Macs are purchased by consumers and students who make their own buying decisions rather than take what an employer issues. Apple has a 15 percent market share of PCs sold at retail and online, according to NPD. Having its own flashy stores helps, of course, as does its clever advertising.

     *     *     *

アップルにとっては大きい

しかし、ほんのささやかなシェアの増加でも、クパチーノの会社にとっては桁外れの伸びになるということを理解することが大変重要だ。アメリカの PC マーケットは非常に大きい。2006 年の販売規模は 6650 万台だった。その1%だけでもアップルがシェアを伸ばせば、前年に 310 万台のマックを売ったアップルにとって、20%から25%も販売台数が伸びることになる。

But more important, you also can see why even modest gains translate into outsized growth in Cupertino. The overall U.S. PC market is so large – 65.5 million were sold in 2006 – that picking up a percentage point of share for Apple, which last year sold about 3.1 million Macs, means its unit sales would jump 20 to 25 percent.

それにマックビジネスは利益率が十分大きいものとなっているので、販売台数が漸増するだけでもそのマージンは大きいものとなる。Dell や HP にとってはほんの些細なものでも、Jobs にとってはとてもおいしい結果となるわけだ。言い換えれば、マイクロソフトやウインドウズ PC 業界から分け前をぶんどらなくても、アップルは十分伸びる余地があるということだ。多分 PC 業界だって成長は続けるはずだ。規模が大きいためにそのペースは遅いかもしれないけれど・・・

And the Mac business is already quite profitable, so the incremental sales yield even better margins. A tiny nick to Dell and HP is gravy for Jobs. In other words, there’s a lot of room for Apple to expand without gouging Microsoft and Windows PC makers, which will also probably keep growing, albeit at a slower pace from a larger base.

     *     *     *

ソフトだって強みだ

最後にまた、アップルのソフトもマックの爆発現象をもたらすかもしれない。大企業についてもだ。おそらくアップルはこの地上で最も優れたソフトウェア会社だ。基本 OS だけでなく、通信やクリエイティビティ、エンターテインメント機器としてのコンピュータの可能性を大きく開くアプリケーションプログラムを、アップルは欠かさず定期的に発売している。アップルソフトの大部分は数年置きに大幅に書き換えられ、簡単で無料のオンラインアップグレードによってパフォーマンスを常に向上させている。

Finally, Apple’s software could turn the Mac into a phenomenon again, perhaps even in corporations. Apple is arguably the best software company on the planet, regularly releasing basic operating system software and application programs that reveal the greater potential of computers as devices for communication, creativity and entertainment. Most of Apple’s software gets an overhaul every few years and is constantly freshened with free, easy, online upgrades that improve performance.

今やマックはインテルのプロセッサを搭載しており、そのマシンはライバルと同じように強力だ。そしてちょっといじるだけで、普通のウインドウズソフトを走らせることができる。また業務上どうしても使わざるを得なかったウインドウズに特化したソフトですら、同様に動かすことができる。自宅でマックを使う社員が IT 部門に対して要求し始めることで、マックは企業にも攻め込むことが出来るようになるのだ。

Also, now that Macs sport Intel processors, the machines are just as powerful as their rivals and, with a little tweaking, can run standard Windows software, including custom applications that many people have to use to do their jobs. Macs could make inroads into more businesses as employees who use them at home begin to demand them of their IT departments.

     *     *     *

それで・・・

で、その教訓はなにか。アップルは競合他社のどこよりも急速な成長を遂げる。誰よりもはやく、頻繁にハードとソフトを改良するからだ。アップルはコンシューマ向け PC の分野を拡大し、マーケットを成長させてきた。長期的な投資としては大変いい話だ。・・・あ、それから、カッコいいミュージックプレーヤや携帯電話だってアップルはちゃんと作っているよ。

So what’s the lesson? Apple is growing faster than its competitors because it improves its hardware and software more often than anyone else. It is broadening what we think of as a consumer-oriented PC and thus helping its market grow. That’s a good long-term investment story. And, oh, by the way, Apple also makes some pretty slick music players and cell phones.

Technorati Tags: ,

コメント / トラックバック7件 to “アップルの秘密兵器はマックだ”

  1. ノブヒョン Says:

    わたしの5G iPodにはMac命と刻印しています。AppleからMacを取ればなにも残らない。Macがすべて。実際わたしはWindowsオンリーの会社で私ひとりMacBookを買ってもらい仕事で使っています。上司に仕事でもMacの良さを説明し、導入してもらった。
    このMacBookのおかげで、効率良い仕事が出来ています。Mac様様です。今年、会社では新基幹システムを導入したが、これまたコードを覚えなくてはならない。この年齢になって、数十万のコードを覚えるのは不可能。Winでは検索機能もお話にならない。エクセルのマクロ機能も限界がある。そこで、MacでPDF変換し、スポットライト検索している訳だが、これが実に効率を上げている。Macがビジネスで活用されないことは、人類にとって不幸なことです。ここまで断言できます。

  2. hiro Says:

    Appleが潰れるかどうかの瀬戸際に立っていた時期のMacOSという存在は、それ自体の魅力に説得力が無かったように思います。ヒットした初代iMacを考えればわかり易いですよ。あのヒットがすぐに終わったのは、ハードのデザイン「だけ」が評価されていた、それが売りだったからですよね。実際に使ってみて、多くの人に受け入れられるような代物ではなかった。そういうヒットは長続きしないし評価も下がりますよ。

    その点今のAppleは、ソフトウェア自体が他社との最大の差別化要素になってますね。むしろ今現在よりも、将来、Leopardやそれを生かしたソフトウェア開発の方が、差別化できる要素が多く存在するので(例えばiPhoneもLeopardの新機能で差別化してますよね)、高い将来性、Mac OS Xの進歩=Appleの競争力向上であることは間違いないでしょう。それも年を追うごとに強くなってますね。

    iPhoneのOSX採用が多くのメディアで報じられて、それ自体がMac OS Xというブランドに対するイメージの向上と、多くの人に対して技術力の高さを示すことにもなったでしょう。未だに旧MacOSの負のイメージを抱いている人が多いので、この影響は計り知れないものがあると思います。次期iPodにも採用されることになればブランド価値はさらに高まるでしょう。その全てがMacのブランド力向上、さらに売上にも繋がるのかと思うと、Appleの強みはソフトウェアなのだと強く思いますね。ここまで導いたジョブズ爺さんの経営手腕には舌を巻きますよ(笑

  3. ノブヒョン Says:

    hiroさんのおっしゃる通りです。確かに会社でも旧MacOSの負のイメージを持っている人が殆どです。今のMacは違うんだというこを分かってもらおうと、会社でがんばっているところです。

  4. せう Says:

    Macが本当の意味で「パーソナル」である事を志向するなら、このままで良いのでしょうが、これから先、企業に攻め込むとするならば、足りないものが沢山ありすぎるような気もします… TPM(セキュリティチップ)とか、生体認証対応とか…

    あとは、以前自分のBlogで書いたのですが、Macは「信者」に支えられているという事実も、実は心配です…

    Boot CampでWindowsも動く現在では、そんなに気にすることではないのかもしれませんが、現在のソフトウェアサービスではAppleが中心となるMac固有のものよりも、色々な選択肢のあるWindows固有のものが強いので、そこがひとつの不安要素です。

  5. Hiroo Says:

    今頃で恐縮ですがブログの復活、おめでとうございます。

    リューアルされてデザインも洗練されてきたことと思いますが、フォントサイズが小さくて読みづらくなってしまった感があります。
    特にこのコメント欄は書き込む部分も含めかなり小さく、目が疲れてしまいます。
    うちはCinema Display 23inchなのですが、ノートでご覧の方にとってはもっと小さくなってしまうのではないでしょうか。
    テキストメインのブログですから、フォントサイズは少なくとも12くらいがいいかと思います。
    いかがでしょう、ご検討下さい。

  6. ステゴザウルス Says:

    Macが強力な力を持つ点同感ですが、ではなぜAppleはMacで利益を得られるのでしょうか。
    PC業界で利益を出しているのはDellとAppleだけとはよく言われますが、OS開発などのoverheadが大きいはずのAppleがシェア3%で十分な利益を得られる根源は何か?ふた昔前ならともかく今ではMacはコストパフォーマンスもPCに負けないですよね。この辺、アップルのコスト構造を掘り下げた記事はなかなか目に出来ないのですが、いかがでしょうか?もしご存知でしたらご紹介いただけると大変ありがたく思います。

  7. ステゴザウルス Says:

    タイムリーにマーケットシェアに関する考察を掲載いただきありがとうございました。とても興味深い内容ですね。シェアを価格低下によって過剰に追いかけ、結果として自らの価値を下げざるを得ない現在のPC業界の形はやはり長い目で見て正常な形ではないようにおもいます。ただ、これは一般小売のウオールマートなどにも適用できそうな気がします。

コメントは受け付けていません。


%d人のブロガーが「いいね」をつけました。