iPology

Steve Jobs-1

iPhone の大幅値下げをめぐる騒動について、ロンドンの MarketWatch が大変皮肉な記事を書いている。

MarketWatch: “Apple introduces the iPology” by Tom Bemis: 07 September 2007

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“iPology”

アップルは、消費者の苦情を PR の只乗りに変えてしまう新しい革新的なマーケティング手法を開発した。その名は「iPology」だ。[注:謝罪 apology からの造語]

LONDON (MarketWatch) — Apple Computer has developed and introduced an entirely new marketing innovation called the iPology that turns customer complaints into free publicity.

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Steve Jobs のオープンレター

木曜日遅く Steve Jobs は、早期購入者に宛てたレターという形で iPology を発表した。200ドルの大幅値下げより前に iPhone を600ドルで早期購入した消費者に宛てたものだ。

Late Thursday Apple CEO Steve Jobs unveiled the iPology in a letter to early purchasers of the company’s iPhone who paid $600 for the devices just weeks before the company dropped the price by $200. See related story.

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それがテクノロジーの世界というものだ

Jobs のレターは消費者の一部をがっかりさせたことについて謝罪しているが、テクノロジー製品の値下げはシリコンバレーではよくあることだとも述べている。

The letter apologized for disappointing some of them, but noted that price cuts on technology products are common in Silicon Valley.

「特定の打切日前に製品を買って、新料金の恩恵に浴しないということは必ずあることだ。新製品であれ、新しい OS であれ、あるいはどんなものであれ常にあることだ。それがテクノロジーの世界というものだ」とレターの中で Jobs は書いている。

“There is always someone who bought a product before a particular cutoff date and misses the new price or the new operating system or the new whatever,” Jobs wrote. “This is life in the technology lane.”

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100ドルのクーポン

そんなことは乗り越えなければならないと顧客にいったあと、それでも怒りの解けないひとには全て、どこでも自由に使える100ドルを与えると述べた。「どこでも」というのは「アップルストアの中なら」どこでもという意味だが・・・

After telling the customers to get over it, Apple said it would give everybody who was still mad $100 to spend anywhere they want … inside an Apple store.

アップルが「ギフト」クーポンを配ったところで、損はしないだろうと皮肉な見方をするひともいる。例えば、そのクーポンで iPod を買ったとすると、アップルとしては iTunes ストアの売り上げが増えた分で「コスト」をカバーできることになるからだ。

Cynical observes suggested that the company won’t suffer from issuing the “gift” certificates, noting that if they are used to buy iPods, for instance, the company will likely make up the “cost” through increased sales at its iTunes store.

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謝罪は本気か

この「iPology」がまったく新しい手法なので、一部のメディアやアナリストの中には、これをアップルが過ちを犯したことを認める本当の謝罪だと間違えてとったひともいる。

The iPology is so new a concept that some media and industry analysts mistook it for an actual apology and suggested that Apple might have somehow made a mistake.

しかし、金曜日の各紙の第一面を見れば、このやり方でアップルが何千万ドルにも相当する宣伝をやってのけたことは明らかだ。これによって、大衆の意識にはこの製品のブランドイメージが強く植え付けられたのだ。

But a quick glance at the number of front page stories Friday makes clear that Apple has generated tens of millions of dollars worth of publicity through the scheme, contributing to the nearly continuous branding of the gadget into the public consciousness.

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ライセンスはできない

アップルとしては、これからのマーケティングにおいても「iPology」を戦略的に利用するものと思われる。しかしながら他社にとっては、複雑な技術的要件を伴わなければこのテクニックで成功するのはむずかしいので、アップルとしてはこのやり方を他社にライセンスすることはないだろう。

Apple is expected to make strategic use of the iPology in future marketing campaigns but is unlikely to license the concept to other companies because of the complex technical requirements needed for successful implementation of the strategy.

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ロンドン発だけあって大変皮肉な見方だが、100ドルクーポンを真の謝罪とみるか、それともマーケティングの手のうちとみるか、意見の分かれるところだろう。

この点について GigaOM ではまったく対照的な二つの記事を載せている。主筆の Om Malik が書いた「iPhone 払い戻しは民衆の力」と寄稿者 Kevin Kelleher の「Jobs の謝罪はアップルの勝利」がそれだ。

たしかに「iPology」を理解することは、我々「並みの頭」ではなかなか難しいようだ。

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コメント / トラックバック4件 to “iPology”

  1. Shinji Says:

    >>ライセンスできない

    ココ、一番ウケました(^_^;;
    でもユーザーからすればたまったもんじゃないですね。

    from WZERO3/ades

  2. ノブヒョン Says:

    これは仕方ないと思う。これがAppleのやり方、まだ今回は誠意あると思う。100ドルのクーポンを貰えるだけでも良いのでは。わたしの場合、初期のMacBookProで3回目のロジックボード交換となったが、今後の保証は無し、これよりましだと思う。アップルケアの男性担当者曰く、わたしのは問題ないですよと言われ頭にきた。これがメーカーサイドの人間が言う言葉か?
    今の日本のアップルケアの体質を疑う。

  3. Arageo Says:

    商品を値下げされて文句をいう消費者、それを真に受けて謝罪するメーカーなど前代未聞だと思っていたのですが、さらにそれをマーケッティングと決めつけるジャーナリズムがあるとはーーー。
    個人的には、Jobsの迅速できわめて誠意的な対応にしびれていたのです。
    じっさい、”iPhone Early Adopters”は、iPhoneの機能と$499/599の値段設定を受け入れて自己責任で購入したのであって、だれに脅されてむりやり買わされたわけでもないーーーさらに、version 1.0のhardwareの完成度に対する不安はたびたび指摘されているのにかかわらず、そのriskを自らうけいれてそのかわり革新的な新製品にだれよりも早く触れるという果実を享受したのだと思う。二ヶ月で30%値下げというのに腹をたてるのは心情的には分かる。しかしマーケッティングを考えてAppleが値下げしたというのは消費者にとってマイナスであろうはずはない。じっさい、早期購入者の中には値下げにおよんでさっそく家族用にもう一台買った人もいるくらい(Apple Gazette Daily 113 – September 5th, 2007)。
    というわけで、私的には今回のJobsの対応はきわめて好意的にとらえています。

  4. ぺをを Says:

    この矢先に、iPhoneが「74日で100万台販売を達成した」というニュースがでてきましたね。
    少なからぬ台数、少なくとも「売れてないから値下げした」なんていう台数ではないと思います。

    100ドルX100万弱、とおおざっぱに考えると、1億ドル弱ですか?
    かなり太っ腹な額面ですけど、
    でも、現金ではなくアップルストアで使うクーポンですから、実際にアップルが負担する額面はそれよりずっと少ないはずだし、しかもそれはアップルストアでのそれだけの額面の需要を喚起する、ということになるわけですからねえ。
    しかも、この件自体が、かなりの話題性ありです。

    1日で、こういうかたちの判断をくだすというのも、おそるべき判断力という気がします。
    すべての部分が計算づくで最初から考えられていた、とまでは思えませんが、少なくとも判断のすばやさと、マイナス的状況をプラスに変換してしまうような錬金術的手段は、凄いと思います。

    iPhoneの商標に関してのCiscoからの訴訟問題に関しても、以前
    「訴訟問題のようなことが話題になればなるほど、Appleにとってはそれはタダで広告してもらっているのと同じであり、しかもそういうことをジョブズははっきり認識している」
    というような分析がありました。

    メーカーとしてのユーザーに対する対応や、そのことによるブランドイメージを確保する、というような問題だけではないですよね。 ( ̄▽ ̄;)

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