Steve Jobs はコントロールを失った

Ipod Event-3

リラックスしているように見えたのに・・・

ニューズウィークの Steven Levy が大変興味深い記事を書いている。

Newsweek: “How Apple’s iPhone Ate the New iPods” by Steven Levy: 17 September 2007 [issue]

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コントロールを失って・・・

秋は、フットボール、新学期、大統領選・・・そして新しい iPod の季節だ。Steve Jobs は、またまたデジタルメディア界の哀れな競争相手たちを完膚なきまでにやっつけてみせた。年末商戦にアップルストアを大入り満員にできる、より安くて、より優れた製品を発表したのだ。「我々は失敗するのではないかとビクビクしていた。我々はこれまでも何度もやり直している。みんなより先頭に立つためであり、クールな製品を出すためだ」と Jobs は語る。そこで Jobs は、先週水曜日にサンフランシスコで、黒のタートルネックとジーンズという出立ちに身を固め、厚いドーラン化粧をした Olivier さながらに、メディアと従業員の大聴衆の前でクールな製品をいやというほど披露してみせた。しかし今回は、筋書きのコントロールを失っていたのだ。

Sept. 17, 2007 issue – Fall means football, back to school, presidential politics … and new iPods. Once again Apple CEO Steve Jobs gets a chance to trounce his hapless competitors in the digital-media area by unveiling better stuff at lower prices, just in time to make sure the Apple Store will be packed with holiday buyers. “We run scared,” Jobs says. “We reinvent ourselves frequently because we have to stay ahead, and because we want to make cool stuff.” So, last Wednesday Jobs donned his costume of black mock turtleneck and jeans—like Olivier dabbing on the greasepaint—and unveiled to a San Francisco crowd of media and employees a bunch of cool stuff. But this time Jobs lost control of his story.

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着信音はアペタイザー

この6月に iPhone が、最も評判の高いアップル製品となったことについてはいやでもお気づきだろう。その結果アップルは、この画期的な製品とその運命をともにすることになったのだ。先週のプレゼンテーションで Jobs は、iPhone の着信音を 99 セントで売り出すという話から始めた。これは iPod というメインコースのアペタイザー(前菜)になる筈だった。

In June, as you can’t help but know, the iPhone became Apple’s most-hyped product ever, so much so that the company’s fate became intertwined with the groundbreaking device. Jobs began his presentation last week by revealing that Apple would soon sell iPhone ringtones for 99 cents. This was supposed to be an appetizer for a main course of iPods.

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花形は iPod touch

まさにメインコースはたっぷりだった。詳細を気にする読者のために申し上げると、新しい iPod nano は Junior Mint みたいにスリム、横幅がちょっと広く、明るいスクリーンはビデオ映像がシャープだ。フルサイズの新 iPod は iPod classic と命名され、4万曲でも十分収納できる。しかしこのショーの花形は iPod touch だ。iPhone と同じ華やかやなタッチスクリーンのインターフェイスを備え、Wi-Fi にも接続できる。これまでで一番クールな iPod だ。「Wild Hogs」や Facebook を見るのにぴったり。(メモリーサイズにより)299 ドルと 399 ドルという値段では、飛ぶように売れること必定だ。

Junior Mints

It was a full meal, indeed. For those keeping score, a new iPod nano is as slim as a Junior Mint, and horizontally stretched a bit so that a bright new screen can show sharp video content. A new full-size iPod, now dubbed the iPod classic, has enough storage for 40,000 songs. The star of the show, the iPod touch, has the same flashy touchscreen interface as the iPhone and has Wi-Fi connectivity. It’s the coolest iPod yet, a great way to watch “Wild Hogs” and use Facebook, and at $299 and $399 (depending on memory), it’s priced to sell.

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Steve Jobs の爆弾

しかし Jobs は、ステージを去る前に爆弾を落とした。iPhone を 599 ドルから 399 へ大幅値下げしたのだ。ハイテクビジネスでは  100 ドルの値下げはよくあることだ。しかし定価の三分の一カットとなるとこれはもうビックリだ。ハイテク新製品として大きくもてはやされたのがたった2か月前だったというのに・・・。そしてこれはその日の語り種(かたりぐさ)となった。iPhone の売れ行きはそれほど好調ではないという話が飛び交っていたので、このドラマチックな値下げは苦し紛れの措置だろうと考える批評家たちもいた。それに、高い値段で買わされた連中はバカにされたと思うのではないだろうか。

But before he left the stage, Jobs dropped a bomb: Apple cut the price of the iPhone from $599 to $399. Slashing the price by $100 might have been high-tech business as usual. But slashing the price tag by a third, only two months after hogging high tech’s red carpet, was startling. And it became the story of the day. Since reports had been rife that sales of iPhones weren’t soaring, some critics opined that this drastic cut was born of desperation. And wouldn’t those who bought one at the higher price now feel like suckers?

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チャンスは一度だけ・・・

プレゼンテーションが終わった後、Jobs は売れ行きの伸び悩みが理由で値下げしたのではない、全体の数字は 100 万に向けて着々と増加していると強調した。(アップルは 2008 年末までに 1000 万台を売り上げたいとしている。)そうではなくて、機を見て勝負に打って出たのだ、と。クリスマスプレゼントにケイタイをと考えているひとは沢山いる。アップルの調査では、iPhone にしたいけれど値段が高すぎるというのだ。だから値段を下げれば、大いに売れる筈なのだ。「チャンスは一度しかない。クリスマス商戦だ。いまここで勝負に出ないと、あと一年待つことになる。より多くの iPhone を売るためには、売上げ額は多少減ってもいい。」Jobs は私にそう語った。では 599 ドルで買ったばかりのひとはどうなる?「彼らに同情はするよ。しかし、誰も傷つけるわけじゃないんだから。」

After the show, Jobs insisted that the move didn’t reflect lagging sales—total figures are creeping up toward a million. (Apple hopes to sell 10 million by the end of 2008.) Instead, he was making a timely gamble. A lot of people are going to be giving phones as holiday presents, and Apple’s research, he says, shows that they want to choose an iPhone but believe it costs too much. Bringing the price down means making the sale. “We have one chance to go out and go for the holiday season,” he said to me. “If we don’t take that chance, we wait a whole other year. We’re willing to make less money to get more iPhones out there.” What about people who just bought one for $599? “I feel for them,” he said. “But, you know, we’re not harming anybody.”

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100 ドルのアップルクレジット

不当な扱いをされた iPhone 購入者たちはそうは考えなかった。メールボックスにどっと苦情が溢れたので、24時間後には Jobs も同情だけでは足りず何かしなければならないと考えた。値段を下げるのは「テクノロジーの世界ではよくあること」といいながら、失望した購入者に対して謝罪するとともに、これまでの購入者全員に対して 100 ドルのアップルクレジットを出すことにした。(6月の発売時にはあたかもスタンリーカップ[注:米、カナダプロアイスホッケー優勝トロフィ]のように iPhone を高々と宙に上げたその同じアップルファンが、今度は高いカネを払わされといって騒ぐのは、私としては非常に皮肉に思える。)

Early Adopter

Plenty of aggrieved iPhone buyers felt differently. And Jobs’s in box was so stuffed with their complaints that 24 hours later he decided he owed them more than sympathy. While emphasizing that lower prices just reflect “life in the technology lane,” he apologized to disappointed customers and offered all previous iPhone buyers a $100 Apple credit. (I find it ironic that the same Apple fans who in June were lofting their newly acquired iPhones in the air like they’d won the Stanley Cup are now complaining that they paid too much.)

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質問がいっぱいあるのに

このような事態の展開は、大幅値下げのニュースをもっと紙面に踊らせる結果となった。しかし、iPod についてはありとあらゆる質問がある。NBC のようないうことを聞かないコンテンツ所有者が料金設定の自由を求めているのに iTunes ストアは本当にうまくいくのか。急に Amy Winehouse の最新盤が欲しくなった iPod touch のユーザーは、一番近いスターバックスに飛び込んで iTunes ストアへフリーでアクセスするのか。(アップルとスターバックスはパートナー協定を結んで、iPod の所有者がコーヒーショップのスピーカーから流れる最新曲をワイヤレスで購入できるようにした。)iPod touch はなぜEメールソフトを搭載していないのか。ワンシーズン分のテレビ番組を入れることができるのは、なぜスクリーンサイズでは iPod touch に敵わない iPod classic だけなのか。みんなは本当にたった2インチしかない nano スクリーンで映画を見るのか。いったい私はどの iPod モデルを買ったらいいのか。そんな大事な質問がいっぱいあるのに答えは何処からも返ってこない。聞こえるのは iPhone 値下げのニュースばかりだ。

That turnaround, of course, generated even more headlines about the price cut. Meanwhile, there are all sorts of iPod issues to consider. Will the iTunes store prevail over balky content holders like NBC who want more pricing control? Will iPod touch users who get a sudden urge to buy an Amy Winehouse cut immediately seek out the nearest Starbucks to get free access to the iTunes store? (Apple and Starbucks announced a partnership so iPodders could wirelessly purchase the trendy tunes that play on the coffeehouse sound system.) Why isn’t there an e-mail application on the iPod touch? Why is the iPod classic, whose screen doesn’t compare with that of the iPod touch, the only model capable of holding a season’s worth of television shows? Will people really watch movies on the nano’s two-inch display? Which one should I buy? Click-wheelers would normally be jawboning such weighty questions, but instead the news is the iPhone Price Cut.

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お奨め着メロ

Jobs 氏へのお奨め着メロがある。「You Can’t Always Get What You Want.」[注:いつでも欲しいものが手に入るとは限らない。Rolling Stones の曲のタイトル。]

Suggested ringtone for Mr. Jobs: “You Can’t Always Get What You Want.”

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この記事は二つの意味で興味深い。

まずは内容そのもの。Jobs のコントロールが及ばぬ事態とは、それだけで十分にショッキングだ。

たった24時間での方針の変更は、その事実を裏書きするものか、それとも当初から予期されていたものなのか。

二つ目は、この記事を書いたのが他ならぬ Steven Levy だということ。

アップルのお気に入りと衆目の一致する彼が、ここまで批判的なことを書いたのはどういうわけか。

Walt Mossberg、David Pogue に続いて Steven Levy まで痛いところを突いている。

アップルとお気に入りメディアの関係は微妙に変化しているのだろうか。

好意的であると、そうでないとを問わず、アップルウォッチャーの眼に映る Steve Jobs 像は微妙に変化しているようで気になるところだ。

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コメント / トラックバック7件 to “Steve Jobs はコントロールを失った”

  1. ノブヒョン Says:

    iPhoneの大幅値下げは賢明だと思います。最初から高すぎる設定だと感じた。私ならまず買わなかった。私はiPod touchでさえ今回は買わないと決めた。コントロールを失ったのでなく、ジョブズ氏は正常に戻っただけだと思います。

  2. Macとえいちやin楽天広場 Says:

    3G対応、16GBメモリ搭載の日本でも使えるiPhoneが11月に登場か

     こん○○は!!ホイヤーです。本日の更新は 「第3世代iPodnano、使ってみてわかったこと(前編)」と「3G対応、16GBメモリ搭載の日本でも使えるiPhoneが11月に登場か」他をご案内いたしま…

  3. JUN Says:

    こんにちは。私も高く買ったユーザーに同情はしますが、ジョブズの言うとおりこの世界にはよるあることです。納得して買ったものが値下がったからと差額のクーポンをもらえるなら私のような古参ユーザーは数百万円も返金してもらわなければなりません(笑)。ただしジョブズも時代は変わったと認識したんでしょう…決してコントロールを失っているとは思えません。あのiPhoneやiPod touchのリリースを統率しているCEOなんですから。

  4. 草加せんべい Says:

    まぁ、いつかは運もつきるわけで。
    クリスマスには、強力なライバルがでるのかもしれない。

    デザイン・ブランドは、誰もが手に入れられないというのも、ポイントで。
    手に入れやすくする方に展開すると、ブランド価値が暴落するのかも。

    携帯用の新しいOSと、これに最適化されたハードウエ、
    さらに、デザインの良さが求められるのだと思う。

    で、これをマネて安いものもでるのが歴史にあうな。

  5. ノブヒョン Says:

    すみませんが、Leopardに関する情報もあれば記事にしていただければ有り難いのですが、こちらの方が私にとって重要な位置にあります。今年はあとこれしかないでしょう?
    リクエストいたします。よろしくお願いいたします。

  6. ノブヒョン Says:

    Appleとジョブズ氏はLeopardを忘れたのか、それともまた延期?
    話題すら出ない。Leopardに関してはコントロールを取り戻す前に、正気に戻って下さいジョブズさん。

  7. ノブヒョン Says:

    Leopardは本当に10月発売が可能なのか?
    甚だ疑問になってきた。

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