Think Secret 閉鎖がもたらした波紋

Nicholas Ciarelli

Nicholas M. Ciarelli | Mark Ostow/The New York Times

アップルがらみのニュースで、異常なほどメディアの関心を呼んだ出来事がある。

かつてアップル噂系の最高峰だった Think Secret が休刊閉鎖に追い込まれたことだ。一片のプレスリリースだけで、その詳細はよく分らなかった。

一流メディア(APReutersNew York TimesWSJBusinessWeekBBCFinancial TimesGuardianBaltimore Sun新華社)から、IT 系メディア(CNETCNET JapanZDNetInformationWeekeWeekArs TechnicaTidBITSComputerworldTechCrunchTechCrunch Japanese)、そしてマック系メディア(MacNNMacworldWiredCult of MacMac ObserverEngadgetEngadget JapaneseTUAWMacDailyNewsMac Rumors)に至るまで、触れなかったメディアを探し出すのが困難なほどだ。

ニューヨークタイムズに至っては都合3本の記事(Brad StoneSaul HansellDavid Pogue)を載せている。

なかでも次に取り上げる Brad Stone の記事は、これまであまり表に出ることのなかった Nicholas M. Ciarelli の写真、それも正面から撮ったものを冒頭に掲げている。

New York Times: “Apple Rumor Site to Shut Down in Settlement” by Brad Stone: 21 December 2007

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裁判の終結

アップルはこの木曜日に一連の裁判を終結させた。未発表の製品計画がウェブに漏れるのを防ごうとした結果、高くつき、負けを認めざるを得なくなったものだ。

SAN FRANCISCO — Apple on Thursday put to rest the last of a series of lawsuits it brought in a losing and costly effort to put a stop to Web leaks about its product plans.

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ウェブサイトの運営者もジャーナリスト?

裁判では、独立系[噂系]ウェブの発行人が従来のジャーナリストと同じ法律上の保護を受けることができるかという点が問題となった。これら噂系は、Steven P. Jobs が大々的に製品発表を行なうのを出し抜くことを目的としているが、そんなウワサ話を楽しみとし、商売とするアップルの熱狂的ファンに受けようとしているのだ。

The suits raised questions about whether independent Web publishers should be accorded the same legal protections as traditional journalists. They were aimed at the gaggle of Apple enthusiasts who have made both a sport and a business out of pre-empting Steven P. Jobs’s big product announcements.

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短いプレスリリース

Nicholas M. Ciarelli はアップル系噂サイトの Think Secret を運営しているが、企業秘密を漏洩したとして 2005 年1月にアップルから訴えられた。木曜日に彼は、アップルと和解に達したこと、Think Secret の刊行は今後行なわないことを明らかにする短いステートメントをそのサイトに出した。

Nicholas M. Ciarelli, who operated a Web site for Apple rumors called Think Secret, was sued by Apple for publishing trade secrets in January 2005. In a brief statement Thursday on his site, Mr. Ciarelli said that he had reached a settlement with Apple and that he would stop publishing Think Secret.

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友好的な解決

アップルが、ハーバード大の4年生の Ciarelli 氏にカネを払ってウェブの刊行を辞めさせようとしたかどうかについては、彼はコメントしなかった。ただ、交渉の結果については満足しているといった。

Mr. Ciarelli, a senior at Harvard, would not comment on whether Apple had given him money to persuade him to cease publishing. But he said he was pleased with the outcome of the negotiations.

「好意的な解決に達することができた」と、彼は電話口でのインタビューに答えた。

“We’ve been able to reach a positive solution,” he said in a telephone interview.

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不本意な判決になりそうだった

2005 年3月に Ciarelli 氏はアップルに対して反訴した。これはカリフォルニア州法によったもので、憲法上保護された言論の自由であるとされるものについて、訴訟当事者が訴訟により経済的損害を蒙った場合について規定したものだ。Ciarelli 氏の弁護を無料で引き受けた弁護士 Terry Gross によれば、アップルの行為は経済的ダメージと不本意な判決をアップルにもたらしたかもしれないという。そのリスクがあったので、今週の和解に至ったのだ、と。

Mr. Ciarelli filed a countermotion against Apple in March 2005 under a California provision that makes litigants vulnerable to financial damages if they sue over what is determined to be constitutionally protected speech. Mr. Ciarelli’s lawyer, Terry Gross, who represented him pro bono, said the motion could have resulted in a financially damaging and embarrassing ruling against Apple, a risk that he said led to this week’s settlement.

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ハーバード大の1年生

Ciarelli 氏はハーバード大の社会学専攻で、学生新聞 The Harvard Crimson にも記事を書いている。アップルが、彼とあと二つのサイトに対し、未発表の製品について情報を漏洩したとして訴訟を起こしたとき、彼はまだ一年生だった。

Mr. Ciarelli, a social studies major, also writes and edits for The Harvard Crimson, the student newspaper. He was a freshman when Apple sued him and the publishers of two other sites over leaks about unreleased products.

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敗訴したアップル

他の二つのケースでは、上級裁に控訴したもののアップルは敗訴した。ウェブサイトの運営者もジャーナリストであり、修正憲法による保護の対象となるという判決を上級裁が出したのだ。裁判所はアップルに対しこれらのサイトに対し訴訟費用70万ドルを支払うよう命じた。

Apple lost the two other suits on appeal after a higher court ruled that the Web site operators were journalists and entitled to First Amendment protections. The court forced Apple to pay $700,000 in legal fees to the sites.

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オンラインジャーナリスト

アップルとの合意は、オンラインジャーナリストの権利を明確に認めたものだと Ciarelli 氏はいう。「もっといえば、オンラインジャーナリストは修正憲法上の権利についてもっと強く主張していい。たとえ相手が大企業であっても。」

Mr. Ciarelli said his agreement with Apple constituted a clear statement about the rights of online journalists: “Speaking more broadly, I think online journalists can feel confident that they can assert their First Amendment rights, even when they run up against large corporations.”

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サイト閉鎖をどう見るか

しかしながら、フリースピーチ運動の支持者には次のように警告するものもいる。サイトを閉鎖したことは、自由な意見を押しつぶそうとした大企業にとって一部勝利を収めたと見ることも出来るのだ、と。

However, some free speech advocates warned that the site’s closing could be viewed as a partial victory for a large company that tried to squelch an independent voice.

「カネをもらって沈黙することが一個人にとってはいいことだとしても、一般大衆にとっては、自由な考え方を競う場でより多くの情報を入手することができなくなるという悪い結果となった」とワシントンの弁護士 Paul Alan Levy(Public Citizen Litigation Group)はいう。

“It’s great for the individual critic to be paid to be quiet, but the public is worse off if we lose the ability to get more information in the marketplace of ideas,” said Paul Alan Levy, a lawyer with the Public Citizen Litigation Group in Washington.

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アップル噂系

Jobs 氏の新製品発表情報を探り出そうとするアップル系サイトを、アップルが法的手段を使って黙らせようとする試みにも拘らず、アップル系のうわさ製造マシン(rumor mill)は活動を続けるだろう。

Despite Apple’s attempts to use the courts to silence the ecosystem of sites that try to ferret out information about its products before Mr. Jobs unveils them on stage, the Apple rumor mill has continued to thrive.

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アップルにとっても友好的な解決

合意事項の一環として、Ciarelli 氏に情報をもたらした情報ソースはひとりたりと明らかにしない、とアップル広報の Steve Dowling は語る。合意は「友好的なもの」であり、その細かい内容は秘密事項だと彼はいう。

None of Mr. Ciarelli’s sources were revealed as part of the settlement, said Steve Dowling, an Apple spokesman. He called the settlement “amicable” but noted that the details of the agreement were confidential.

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Nick dePlume こと Nicholas M. Ciarelli が書く Think Secret は、アップルのウワサ話になくてはならぬ存在だった。

Think Secret が書くと一流メディアまで大きく取り上げるのが常だった。

流れが変わったのは Aperture を取り上げたころからではなかったかと思う。ディープスロート方式が裏目に出たのだ。

その後あまりぱっとしなくなったのは、この和解のための秘密交渉がからんでいたことも一因だったのだろう・・・

1月のマックワールド直前のこの時期に、なぜこの話が浮上したのか。

また、今後 Think Secret はどうなるのか。

プレスリリースの「より幅広くジャーナリズムを追求する」(broader journalistic pursuits)という文言には、類似のサイトの再開も含まれるのだろうか。

★初出はこちら[maclalala:annex

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続報(12月26日):

なんと、Think Secret が新しい記事を掲載している・・・

12月25日付けで、セキュリティアップデートの話。

プレスリリースの「Think Secret は今後発行しない」(Think Secret will no longer be published.)というのは何だったのか?

「友好的な」合意に達したけれど、またひと悶着あるのか・・・

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コメント / トラックバック3件 to “Think Secret 閉鎖がもたらした波紋”

  1. TORIO Says:

    Appleもここまでメジャーな会社になったのだから秘密主義から脱却したら良いのではないでしょうか。
    企業戦略といえばそうなんでしょうが、すぐには他社に追い抜かれない技術を持っていると思います。クローンは出て来ても所詮クローンは本物には勝てないでしょう。
    これは意見の分かれることかも知れませんが、皆さんはどう思われているのでしょう?

  2. pochi Says:

    はじめまして。
    私は秘密にしていて良いと思います、実際アップルは他の会社と比べかなり厳重に秘密を守っていますが、そのおかげで突然発表されたときのインパクトは大きいです。
    そして、このインパクトが衝動買いに繋がっているんだと私は思っています。技術的なことは他のPC企業と現時代では大差ないと思いますがアイデアやデザインの発想が他の企業より優れていることから発表ぎりぎりまで秘密にしているのだと思います。

    PS.たいしたことではないですがHPの一番下に笑顔、、、前からありましたっけ?

  3. shiro Says:

    > pochi さん
    アップルの秘密主義に対する評価は いろいろあるようです

    ところで ご指摘のにっこりマーク 初めて気がつきました
    これはなんでしょうか・・・

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