Next Big Thing

Microsoft Yahoo Acquisition

マイクロソフトのヤフー買収提案で大騒ぎだ。

果してこれが Next Big Thing(次なる大きな潮流)といえるのだろうかと、ニューヨークタイムズの John Markoff が疑問を呈している。

New York Times: “Yahoo Deal Is Big, but Is It the Next Big Thing?” by John Markoff: 03 February 2008

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シリコンバレーの本質

マイクロソフトの目から見ると、グーグルに追いつく最後のチャンスがヤフーに見えたのかもしれない。しかし大きな金額とその意欲にも拘らず、ヤフー買収提案は必ずしも熱狂的に迎えられたわけではない。それはシリコンバレーが、企業買収で成長することよりも下から叩き上げていく技術革新の方を好むせいかもしれない。シリコンバレーでは、投資資金も人的知力も「Next Big Thing」(次にくる大きな流れ)を見越せる — 過去の最後のものではなく –  そんな新興企業に向けられているからだ。

Microsoft may see Yahoo as its last best chance to catch up. But for all its size and ambition, the bid has not been greeted with enthusiasm. That may be because Silicon Valley favors bottom-up innovation instead of growth by acquisition. The region’s investment money and brain power are tuned to start-ups that can anticipate the next big thing rather than chase the last one.

次なる戦いに火を付けるのは何だろうか。それは、インテルが月曜日に発表しようとしている Silverthorne というコード名の低消費電力のマイクロプロセッサかもしれない。それは一連の次世代ワイヤレス携帯機器用に設計されたものだが、シリコンバレーでは次なるソフトウェア技術革新の皮切りとなることが期待されている。

And what will touch off the next battle? Maybe it will be a low-power microprocessor, code-named Silverthorne, that Intel plans to announce Monday. It is designed for a new wave of hand-held wireless devices that Silicon Valley hopes will touch off the next wave of software innovation.

あるいはまた、まったく異なる別のものかもしれない。

Or maybe it will be something else entirely.

誰も本当のところは分かりはしない。未来に賭けることこそシリコンバレーの本質なのだ。誰もが Next Big Thing を追いかける。間違いを犯すかもしれないということを承知のうえで・・・。間違いを犯したものは生き残れないのだ。

No one really knows, of course, but gambling on the future is the essence of Silicon Valley. Everyone chases the next big thing, knowing it could very well be the wrong thing. And those who guess wrong risk their survival.

これこそ、シリコンが中心をなす現代経済において、トップランナーが常にトップであり続けることができない理由なのだ。

That is why, in this silicon-centric economy, front-runners do not stay front-runners for long.

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シリコンバレーの健全さ

マイクロソフトは、自ら築くことのできなかったものを買収によって追いつこうとしている。技術者や企業家の多くは、この取引自体がシリコンバレーの新興企業のカルチャーに差し迫った脅威を与えるとも、シリコンバレーがデトロイトの道を辿ることになるともいってはいない。これは、半世紀以上にわたって幾度となくすばらしい技術を生み出してきたこの中心地域の健全さを物語るものだ。

Now Microsoft is trying to make up ground by buying what it has not been able to build. To many technologists and entrepreneurs here, the deal does not indicate any imminent threat to the Valley’s start-up culture or suggest that the region might go the way of Detroit; it underscores the health of the heartland that has produced waves of ever-more powerful technologies for more than half a century.

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IBM の轍を踏むか

ヤフー買収提案は、「マイクロソフトがしがみついてきたデスクトップ PC なるものがいかに無意味だったかということを物語る」と Nicholas Carr[インターネットがもたらした結果について書かれた本「The Big Switch」の著者]はいう。

The bid for Yahoo “underscores how Microsoft’s hold on the personal computer desktop is meaning less,” said Nicholas Carr, author of “The Big Switch,” which describes the consequences of Internet computing.

同じ意味で、IBM が 1980 年代初頭に遭遇したのと同じ状況にマイクロソフトがいるのかもしれない。PC によってメインフレームビジネスが脅かされた IBM は、直ちに反撃に出て最大の PC ベンダーとなった。

In that sense, Microsoft may in a situation identical to the one faced by I.B.M. in the early 1980s. Dominant in the mainframe business and threatened by PCs, I.B.M. responded by quickly becoming the largest PC vendor.

持てる製造能力をすべて注ぎ込んだにもかかわらず、なかなか PC ビジネスは収益が出せず、ビジネスを成り立たせることも出来なかった。IBM は以前の状態に復するのに、激しい苦痛を伴う企業文化の変化と、幹部や何千何万という従業員の削減を受け入れなければならなかった。

However, despite all of its manufacturing proficiency, the PC business was far less profitable and I.B.M. was unable to make that business work. It took a wrenching cultural change and the shedding of its management and tens of thousands of employees to regain its footing.

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何かを捨ててでも前進する気持ちがあるのか

つまるところ、マイクロソフトが新しい買収で巧くやれるかどうかは企業文化の問題だといえよう。巨大ソフトウェアメーカーが、(ちなみに本部のあるワシントン州レドモンドはシリコンバレーから 850 マイルほど隔たっているが)、巨大買収をテコにしてシリコンバレーのハートに食い込むことができるのかどうか。そのことによってマイクロソフトは、過去ではなく未来を見ざるを得なくなるのかどうか。

Ultimately, Microsoft’s challenge in making its new acquisition work will be a cultural one. Can the giant software maker — which, incidentally, is based in Redmond, Wash., about 850 miles from Silicon Valley — use a huge acquisition to tap into what makes the Valley tick? Will it force Microsoft to look forward instead of backward?

この問題こそが、マイクロソフトが直面しているチャレンジの本質を示すものだ。

To many, these questions frame the challenge that Microsoft confronts.

「それは、何かを捨てて前進する気持ちがあるのかどうかということに帰する」と David Liddle[U.S. Venture Partners のベンチャーキャピタリスト]はいう。「それこそまさに、何かを捨てて Next Big Thing に向かうことができる能力のことなのだ。」

“To a large degree, it’s the willingness to move on and abandon something,” said David Liddle, a venture capitalist at U.S. Venture Partners. “It’s that ability to let something go and move on to the next big thing.”

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一部しか紹介できなかったが、ヤフー、マイクロソフト、グーグル、IBM、さらにはシュンペーターの創造的破壊(Creative Destruction)にまで話が及んで、大変に読み応えがある。

企業買収でシェア拡大を図るような姿勢に未来はない、次なる大きな潮流(Next Big Thing)に賭けてこそ真の技術革新があるのだという意見は傾聴に値する。

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追記:Jerry Yang の社内Eメール(2月5日)

ヤフーをめぐる情勢は混戦模様になってきた。

マイクロソフトが買収提案を持ちかけたその日に Jerry Yang が社員に発出したEメールが明らかになった。

当日のヤフーの様子が窺えて興味深い。

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コメント / トラックバック1件 to “Next Big Thing”

  1. TORIO Says:

    これは、マイクロソフトが行き詰まってきたことの証だと考えます。マイクロソフトは最後の賭けに出ている。
    Windowsは限界にきているのは事実だ。(ただしシェアは企業を中心に保つでしょうが)Officeも捨てる勇気があるのか?
    Googleに勝つには捨て身が必要です。果たしてヤフーと合体することで、Google+Appleに勝てるのか?
    わたしは、GoogleとAppleは水面下でもっと凄い計画を立てていると思いますが。
    先手はGA陣営が打つでしょう。もう勝算は決まっている。
    マイクロソフトの計画にヤフーが呑むかは、はなはだ疑問である。

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