次世代コンピューティングはアップルが席巻する

Iphone Os

iPhone SDK が発表された直後に書かれた興味深い記事がある。

ReadWriteWeb: “Why Apple Will Dominate Next Gen Computing” by Alex Iskold: 09 March 2008

プログラミングというものに対するアップルの考え方をよく反映しているように思えるからだ。

3月6日のイベントではマイクロソフトの Exchange サポートという企業向け対策と iPhone SDK が発表されたが、後者の方がはるかに重要だという。

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iPhone SDK でゲームが変わる

Exchange  のサポートによる企業への対策がいかにクールに見えても、もうひとつのより重要な発表の前では影が薄くなる。iPhone SDK のことだ。アップルが MacOS や iPhone のアプリケーション作成に使うこの強力なプラットフォームは、いまや完全にオープン化された。この Objective-C をベースとする[プログラミング技術の]蓄積は、10年という時間をかけて完璧なものとなった。ソケット、グラフィックス、オーディオ、モーションコントロール、ユーザーインターフェイスの構成要素などといった OS のためのインターフェイスが完璧なものとなったのだ。このプラットフォームには完全な iPhone シミュレータ、XCode 開発環境、ワンクリックによるコンパイル/ビルド/展開プロセスが含まれている。まさにこのプラットフォームによってゲームが変わるのだ。

No matter how cool the exchange support and the enterprise play is, that news is dwarfed by the other, much more important announcement – the iPhone SDK. The powerful platform that Apple uses to create beautiful applications for MacOS and iPhone is now completely open. Over a decade in making, this Objective-C based stack is complete with interfaces for operating system, sockets, graphics, audio, motion control and UI components; just to name a few. The platform comes with complete iPhone simulator, XCode development environment and 1-click compile/build/deploy process. This platform is a game changer.

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言語よりライブラリが重要

ハッキリさせておきたい。重要なのは開発言語ではなく、ライブラリの方なのだ。新しい言語が登場するたびにこれこそベストだとデベロッパはいうが、私はそうは思わない。今日では、ライブラリがちゃんと整っていない開発言語なんて使用に耐えないのだ。ソフトウェアの複雑さが増すにつれ、ますますライブラリが重要になる。マイクロソフトですらこのことを .Net が何年も遅れるという苦い経験から学んだのだ。当時 Java を採用して最適化していたら、他社に何年も先んずることができた筈だ。

Let’s be clear. It is not the language, but the libraries that matter. Every time I hear developers talk about a new language and say it is by far the best one, I just shake my head. A new language is not going to be usable in today’s world unless all of the libraries are in place. As the complexity of our software increases, so do demands on libraries. Microsoft learned it the hard way with years of set backs when it rolled out .Net. Had it simply embraced and optimized Java, it could have been years ahead instead.

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コードを築いてきたアップル

アップルの選んだ道はまったく異なるものだった。この10年アップルは、非の打ち所のないすばらしいやり方で、顧客や投資家の賞賛を勝ち得てきた。アップルが新しい発表をするたびに、もうこれ以上はないだろうと何度も考えたものだが、しかしその都度 Jobs とその仲間たちは新しい手品を帽子から出してみせたのだ。アップルが実行という技を完璧なものにしたマシンであることは明らかだ。それだけではない。アップルの秘密はソフトウェアにある。他の連中は、新しい言語とその骨格を作ったかもしれないが、アップルはそのコードを完成させ、蓄積してきたのだ。

Apple choose a different path. For the last decade Apple has been wowing the crowds and investors with its flawless and lightning quick execution. Every new Apple announcement, we keep thinking that they won’t top it. But every time, Jobs and his crew pulls another trick out of the hat. Clearly, Apple is a well-oiled machine that has perfected the art of execution. But beyond that, Apple’s secret sauce has been its software. While others have been inventing new languages and frameworks, Apple kept perfecting and building up its code.

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Objective-C

アップルはその初期から Objective-C と呼ばれる言語を取り入れてきた。手続き型言語の中でオブジェクト指向の言語だ。Jobs がアップルに復帰したとき、それまでの OS をボツにして Unix 支持に方針転換したが、それは正しい選択だった。そうすることでアップルは、美しくシンプルなユーザーインターフェイスを保持しながら、本格的プログラマーを直ちに利用できるようになった。Java が登場したときもアップルは動かされなかった。あまりにスピードが遅かったからだ。概していえば、アップルはずっと新しい言語を無視し、[Objective-C という]プラットフォームに固執し続けたのだ。賢く、よく規律がとれて、慎重なやり方だった。

Since the early days, Apple embraced a language called Objective-C – an object-oriented flavor of the popular procedural language. When Jobs returned to Apple, one of the early smart decisions was to ditch the old operating system in favor of Unix. This moved [sic] allowed Apple to instantly tap into serious programmers while retaining a beautiful and simple UI. When Java came along, Apple was unmoved, because it was just too slow. In general, over the years Apple has ignored new languages and just stuck with its platform. Smart, disciplined and mature.

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iPhone プラットフォーム

アップルの iPhone プラットフォームは MacOS の開発で得られたものとその多くを共有している。アップルがそれまでの OS を iPhone でも動くようにしたのはすばらしいことだった。これまで蓄積してきたコードのすべてが瞬時にして新しいデバイスで利用可能になったのだ。唯一の例外はユーザーインターフェイスのライブラリだった。マルチタッチスクリーン、モーション、iPhone 特有のグラフィックスやサウンド、そういったものを取り入れなければならなかったからだ。

The Apple iPhone platform shares a lot with the MacOS developer stack. Brilliantly, Apple made its operating system run on iPhone, instantly leveraging its entire code base on a new device. The one exception is the UI libraries, which had to be designed specifically for multi-touch screen, motion, unique graphics and sound on iPhone.

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開発ツールのワンセット

Iphone Tools

iPhone Development Offering

デベロッパが利用できるのは非常に安定した API だけではない。入り口から出口まで目的に応じて開発ツールが揃っているのだ。XCode(無料ではない)が開発アプリケーションの中心だ。それには最新のエディタ、デバッガ、ソースコード統合などが含まれ、ドラッグ&ドロップが可能なユーザーインターフェイスビルダではウィジェットの形で iPhone の標準的コントロールが利用できる。iPhone の診断分析にはインスツルメントと呼ばれるツールセットが準備されている。ツールセットの中で最もすごいのは iPhone の本格的シミュレータだろう。デベロッパは、iPhone がなくても書いたコードをマック上で直ちにテストできるのだ。

Beyond rock-solid APIs, developers get an end-to-end set of development tools. XCode is the studio for developing applications (not free) and it includes a modern editor, debugger and source code integration. It also features a drag-and-drop UI builder, which has all the standard iPhone controls available as widgets. For profiling and diagnostics of iPhone, Apple offers a set called Instruments. And the most impressive piece of the tool set is a fully-fledged iPhone simulator. Developers can write and immediately test the code right on their Macs, without deploying it to iPhone.

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デスクトップのさらに先へ

これまでのウェブアプリケーションは、様々の点でデスクトップアプリケーションに追いつこうとしてきた。今やハンドヘルドデバイスの方が大きく進歩している。現行のいかなるブラウザより何年分も先に進んでいる。アップルのグラフィックスやモーション、サウンド API の力そのものによって、これまでウェブでは不可能だったものへの扉が開いたのだ。

In a lot of ways, web applications have been playing catch up with Desktop apps. Now, a handheld device has lept forward, years ahead of what is available inside any modern browser. The sheer power of Apple’s graphics, motion and sound APIs just opened the door for things that have not been possible before on the web.

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最後の一花

6月の App Store 発表のときには、何千というアプリケーションが登場するだろう。多くの会社がこの偉大な新しいプラットフォームでアプリケーションを作成しようと殺到し、デベロッパは書店で Objective-C の本を買おうと押し掛ける。この言語も最後の一花を咲かせるというわけ。かつて JavaScript の人気が沸騰したのはウェブで使用可能な言語がそれしかなかったためだが、Objective-C だって新しいパワフルなプラットフォームで使えるベストの言語というわけではないのだ。[注:ここは Objective-C を積極的に解すべきとの意見もある。コメント参照。]

When the App Store launches in June, there will be thousands of applications. Companies are rushing to build apps using this great new platform. Developers are rushing to the stores and are creating Objective-C books. This language is having the last laugh now. Like JavaScript, which bubbled up because it was the only choice in the web medium, Objective-C is not a language of choice in this new and powerful platform.

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次世代コンピューティングはアップルが席巻する

アップルはこの移行を見事にやってのけた。企業向け対策と SDK は両々相俟って、iPhone を未来のハンドヘルドデバイスとしての地位に高めるだろう。PC は最後の一撃をくらったことになるが、皮肉なことにそれは MacBook(増加しているのは確かだが)のせいではなく、新しいちっちゃなコンピュータのせいなのだ。アップルは優雅に、容赦なく、そして創造的に復讐を成し遂げた。次世代のコンピューティングはアップルが席巻することになるだろう。果たしてそれはいいことか? 多分そうだ。マイクロソフトが牛耳る世界よりは間違いなくいいに違いない。

Apple has made this play flawlessly. The enterprise and SDK solutions will go hand-in-hand to propel the iPhone to be THE handheld device of the future. Ironically, the PC just got its final blow not from a MacBook (which has been on the rise too!), but from a small new computer. Apple got its revenge elegantly, relentlessly and creatively. The next era of computing will be dominated by Apple. Is this a good thing? Likely yes, and it is surely better than one dominated by Microsoft.

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★初出はこちら[maclalala:annex | アップルは次世代コンピューティングを席巻する

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コメント / トラックバック5件 to “次世代コンピューティングはアップルが席巻する”

  1. Arageo Says:

    原文、訳ともに少々腑に落ちない点がありましたのでーーーすこし見解を述べさせてください。
    まず、
    When Jobs returned to Apple, one of the early smart decisions was to ditch the old operating system in favor of Unix.
    “Jobs がアップルに復帰したとき Unix 指向のそれまでの OS をボツにしたが”
    ではなく、
    “Jobs がアップルに復帰したとき Unix指向に(転換)して、それまでの OS をボツにしたが”
    ではないでしょうか。
    それからのところは”Objective-Cもじきに衰退する”ととられているようですが、小生には逆に”最後に笑うのはObjective-Cだ”という方が全体の論旨に合うように思えます。そして、
    Like JavaScript, which bubbled up because it was the only choice in the web medium, Objective-C IS NOT a language of choice in this new and powerful platform.
    というのはやや矛盾しているように思うので
    Like JavaScript, which bubbled up because it was the only choice in the web medium, Objective-C IS a language of choice in this new and powerful platform.
    のマチガイではないかと思いました。

    あくまでも個人的見解ということでーーー。

  2. shiro Says:

    > Arageo さん
    いつも貴重なコメント ありがとうございます

    最初の点は 私の誤訳です ご指摘のとおり訂正しました

    第二の点 Objective-C が最後に笑うというのは なかなか説得力があるような気もします
    ただ 元の文章からは必ずしも分明でない[?]ので 注記に止めました

    つい英語の文脈だけから訳してしまうことが多く 反省しています
    ご指摘 ありがとうございました

  3. TORIO Says:

    デスクトップでiPhoneの機能が取り入れることができたらマックが席巻する時代は近い。
    Windows環境の会社でカタログ作成用と私の2台Macを使っていますが、周りの者はMacが仕事でもこんなに便利なのかとの認識が深まっています。
    あるアンケートでも一番仕事に役立っているパソコンの1位はMacとの結果が出ているようです。6月を待たずして既にMacは最も仕事に役立つパソコンであるのは間違いないです。
    ただ残念なことは基幹システムでは汎用性のあるものがない。これがMacで実現すれば仕事の効率は格段に上がるでしょう。

  4. Macとえいちやin楽天広場 Says:

    次世代コンピューティングはアップルが席巻する

     こん○○は!!ホイヤーです。本日の更新は 「山田祥平の「こんなノートを使ってみたい」:アップルが考える「ポータブルバリュー」」と「次世代コンピューティングはアップルが席…

  5. GNUE(鵺) Says:

    この記事はもしかしてスルー力が試されているのでしょうか(^^;?
    (ツッコミどころ満載)

    》アップルはその初期から Objective-C と呼ばれる言語を取り入れてきた。

    これが NeXT はならわかりますが、Apple はというのは大嘘です。
    もし正しく書こうとするならば冗長ですが

    『Mac OS X の元になった OPENSTEP/NEXTSTEP の生みの親である NeXT Computer, Inc. はその初期から Objective-C と呼ばれる言語を取り入れてきた。」

    》これまで蓄積してきたコードのすべてが瞬時にして新しいデバイスで利用可能になったのだ。

    かなり微妙ないいまわしです。「すべてが瞬時にして」というのはかなり課題広告です。Cocoa Touch のフレームワークは Mac OS X の Cocoa と共通している部分もありますが、かなり違う部分もあります。UI 以外がすべてそのまま使えるわけではありません。

    》XCode(無料ではない)が開発アプリケーションの中心だ。

    Xcode は『自由』(Free)ではありませんが『無料』(Free)です。iPhone のデベロッパープログラム自体は有料ですが iPhone SDK 自体は無料で手に入ります。

    》ドラッグ&ドロップが可能なユーザーインターフェイスビルダではウィジェットの形で iPhone の標準的コントロールが利用できる。

    「ウィジェット」という用語は微妙。広義の意味での「ウィジェット」とということなら間違いではないけれど、ダイナミックHTMLベースのウィジェットみたいなものを指しているのなら間違い。

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