アップルのデザインはこうやる・・・

Apple Speaker

Apple Speaker by GeekAlerts

少し前だが、アップルのデザイン現場を彷彿とさせる記事がビジネスウィークに載った。

アップルにおけるデザイン開発の現場が垣間見えて興味深い。

BusinessWeek: “Apple’s design process” by Helen Walters: 08 March 2008

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SXSW プレゼンテーション

アップルのシニアエンジニアリングマネージャの Michael Lopp が SXSW[South by Southwest]で興味深いプレゼンテーションをした。他の会社ではやってみても失敗することが多いのに、どうしてアップルではすばらしいデザインに到達できるかということを説明したのだ。これまでもアップルは何度も消費者に対してすばらしいプレゼントをしてきた。(「すばらしいアイディアをすばらしいアイデアに包んで」、言い換えれば、すばらしいソフトウェアをすばらしいハードに載せ、美しいパッケージにして・・・。)そして、みんなが自問してきた質問をしてみせた。「なんでこんなスゲーことができるんだ?」と。(South by Southwest ではパネリストはこんなくだけた喋り方をする。)それから彼はいくつか具体例を挙げた。

Interesting presentation at SXSW from Michael Lopp, senior engineering manager at Apple, who tried to assess how Apple can ‘get’ design when so many other companies try and fail. After describing Apple’s process of delivering consumers with a succession of presents (“really good ideas wrapped up in other really good ideas” — in other words, great software in fabulous hardware in beautiful packaging), he asked the question many have asked in their time: “How the f*ck do you do that?” (South by Southwest is at ease with its panelists speaking earthily.) Then he went into a few details:

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細部まで完璧なモックアップを作る(Pixel Perfect Mockups

Lopp によれば、このためには膨大な量の作業と時間が必要だ。しかし、「こうすることで曖昧なところがなくなる。」当初は時間がかかるかもしれないが、あとで誤りを修正するための時間は要らなくなる。

This, Lopp admitted, causes a huge amount of work and takes an enormous amount of time. But, he added, “it removes all ambiguity.” That might add time up front, but it removes the need to correct mistakes later on.

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10対3対1(10 to 3 to 1

アップルのデザイナーはどの製品についてもまったく異なるモックアップを10は作る。Lopp 曰く、「3つがよく見えるようにあと7つ」作るのではない。そんなことならみんながやっているだろう。そうではなくて、まったく制限を設けず心行くまでデザインさせたものを10作るのだ。それから何か月もかけて3つに絞り込む。そして最後に3つの中からこれはと思うものを決めるのだ。

Apple designers come up with 10 entirely different mock ups of any new feature. Not, Lopp said, “seven in order to make three look good”, which seems to be a fairly standard practice elsewhere. They’ll take ten, and give themselves room to design without restriction. Later they whittle that number to three, spend more months on those three and then finally end up with one strong decision.

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平行するデザイン会議(Paired Design Meetings

これは実に興味深い。デザインチームは毎週二つの会議をこなす。ひとつはいろんな制約を無視して、自由に発想するブレインストーミングだ。Lopp のことばを借りれば「クレージーになる」(go crazy)。またこれとは別に、その対極ともいえる生産会議(production meeting)を定期的に開く。こちらでは、この途方も無いアイデアをどうやったら実現できるか、デザイナーとエンジニアが一緒になって細部まで見極めるのだ。この会議と手順がすべてのアプリケーション開発に適用される。アプリケーションが進行するにつれて、その比重が変わっていくのは当然だ。しかし、最後の段階まで創造的発想(creative thought)の可能性を残しているのは実に見事だ。

This was really interesting. Every week, the teams have two meetings. One in which to brainstorm, to forget about constraints and think freely. As Lopp put it: to “go crazy”. Then they also hold a production meeting, an entirely separate but equally regular meeting which is the other’s antithesis. Here, the designers and engineers are required to nail everything down, to work out how this crazy idea might actually work. This process and organization continues throughout the development of any app, though of course the balance shifts as the app progresses. But keeping an option for creative thought even at a late stage is really smart.

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ポニー会議(Pony Meeting

Eriskay Pony

Eriskay Pony

これは Lopp がプレゼンテーションの初めの方で話したことと関連する。シニアマネージャがあれこれと彼らの要望を列挙するプロセスのことだ。「私が欲しいのは WYSIWYGだ・・・。主要なブラウザをサポートするようにして欲しい・・・。アップルの精神を反映するようなものが欲しい・・・。」要すれば Lopp のいう「ボク、ポニーが欲しい!」というヤツだ。[注:pony、小馬、子供たちが欲しがる愛玩物]「誰だってポニーを欲しがるだろう。ポニーってゴージャスだから・・・。」問題は、自分が欲しいものを挙げているだけだということだ。見当違いの要望でも、給与を払ってくれる連中の話はムゲにできない。

This refers to a story Lopp told earlier in the session, in which he described the process of a senior manager outlining what they wanted from any new application: “I want WYSIWYG… I want it to support major browsers… I want it to reflect the spirit of the company.” Or, as Lopp put it: “I want a pony!” He added: “Who doesn’t? A pony is gorgeous!” The problem, he said, is that these people are describing what they think they want. And even if they’re misguided, they, as the ones signing the checks, really cannot be ignored.

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解決策は?

で、解決策はこういうことだと Lopp はいう。平行するデザイン会議が決めた最善のアイデアをトップに見せておくのだ。これこそ長年欲しかったポニーだというかもしれない。こうしてポニーは実行可能なものとなる。そもそもトップ連中[C-suite:注参照]は、デザイナーが何をやっているのか知りたいと思うだろうし、当然自分たちにはそれに意見をいう権利があると思うだろう。こうすることによって彼らの意見も吸収され含まれることになる。その結果後々ひどい間違いを犯すことも避けられるのだ。

[注:C-suite、CEO(最高経営責任者)や CFO(最高財務責任者)、COO(最高業務執行責任者)から CIO(最高情報責任者)、CTO(最高技術責任者)、CMO(最高マーケティング責任者)まで、Chief で始まる肩書きを持つ人たち]

The solution, he described, is to take the best ideas from the paired design meetings and present those to leadership, who might just decide that some of those ideas are, in fact, their longed-for ponies. In this way, the ponies morph into deliverables. And the C-suite, who are quite reasonable in wanting to know what designers are up to, and absolutely entitled to want to have a say in what’s going on, are involved and included. And that helps to ensure that there are no nasty mistakes down the line.

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どうやら Michael Lopp はデザイン現場に近いように思える。

現場の意見にどうやってトップの同意をとりつけるかというアップル内部の様子が想像できておもしろい。

Michael Lopp 自身、多彩な経歴の持ち主で興味深い人物のようだ。

アップルのデザインというと Jonathan Ive しか念頭に浮かばないが、他にもいろいろな人材がいるということだろう。

B3 Annex の名訳を参考にさせていただきました。]

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参考:

・BusinessWeek: “Apple’s design process” by Helen Walters: 08 March 2008

・TUAW: “Michael Lopp on how Apple thinks different in design” by Mat Lu: 12 March 2008

・Ars Technica: “Apple’s Michael Lopp: The devil is in the details” by Chris Foresman: 13 March 2008

・Mac Rumors: “Insight into Apple’s Design Process” by Arnold Kim: 13 March 2008

・iPod WeBlog: “Appleのデザインプロセス。“: 15 March 2008

・B3 Annex: “Appleエンジニアが語る、Appleがデザインプロセスで行っている4つのコト“: 16 March 2008

・Macin’ Blog: “Appleのデザインプロセス“: 17 March 2008

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コメント / トラックバック6件 to “アップルのデザインはこうやる・・・”

  1. LPM Says:

    こんばんは。記事リンクと、トラックバックありがとうございます。
    shiroさんのBlogからのアクセスが多かったので驚きました。笑

    未だによく記事の書き方に迷いがあるため、shiroさんの文章は
    読みやすく、綺麗で、ただただ感心するばかりです・・・笑

    日頃Appleについてといえば公式発表と、噂サイトの情報ばかりを見ているので、
    Appleの人間の語るApple内部の様子というのはとても興味深く読むことができました。

  2. TORIO Says:

    DR(デザインレビュー)は私の会社でも月に数度行っているが、機能的なものを議論することが多い。

    Appleはやはり機能プラス外観が大事なんでしょう。

  3. shiro Says:

    > LPM さん
    これはという記事は 必ずどこかでマックユーザーが取り上げていることに いつも感心しています
    これからも ご活躍をお祈りします

    > TORIO さん
    Steve Jobs や Jonathan Ive が 上意下達でデザインを牛耳っているのではないか と考えたこともあったので 現場から上がっていくやり方に 意外な感じも受けました
    ポニー会議で 幹部連中の根回しをするところなんか どこかの国みたいですね・・・

  4. Macとえいちやin楽天広場 Says:

    アップルのデザインはこうやる・・・他。

     こん○○は!!ホイヤーです。本日の更新は 「「Apple」のロゴを見るだけで創造性が上昇」と「Macでも初音ミクが使える!CrossOverMacと初音ミクのバンドル製品発売」と 「TidBITS日本語版最…

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