MacBook Air にはピッタリのマーケットがある

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今年から新たにヤンキーグループに移籍した Carl Howe が、興味深い記事を寄稿している。

MacBook Air にはピッタリのマーケットがあるではないかというのだ。

Blackfriars’ Marketing: “The MacBook Air is an ideal product — in the right market” by Carl Howe: 18 January 2008

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つのる不満

MacBook Air の欠点について、そこら中のブログが不平をいっている。プロセッサのスピードが遅い、光学ドライブやイーサネットが付いていない、ユーザーがバッテリーを交換できない、値段が高いなどなどだ。これで誰かが、アップルはお終いだ、またマイクロソフトの出番だなどと言い出せば、不平不満も完璧というわけだ。

Blogs worldwide are moaning about the MacBook Air’s deficiencies, ranging from its slow processor, its lack of an optical drive and wired ethernet, its lack of a user-replaceable battery, and of course, its high price. All we need now is someone predicting that it will be the death of Apple and the second coming of Microsoft, and the moaning will be complete.

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ファッション・ホスピタリティ業界

いろいろ不満をいっている連中は、フェラーリには十分なトランクスペースがないと文句をいう連中と同じだ。アップルは MacBook Air をゴマンと売ろうとしているわけじゃない。初年度は数百万台売れればいいのだ。何故かって? MacBook Air は、未開拓だが儲けが大きく、かつマーケットシェアも拡大できるニッチェマーケット[market niche]に狙いを定めているからだ。それは、ファッションデザイナーや高級ホスピタリティ[luxury hospitality]業界なのだ。

Frankly, it strikes me that these people who about the feature set are a bit like the thsose [sic] who complain that Ferraris don’t have enough trunk space. Apple’s going to sell if not a gazillion, at least a few million MacBook Airs in its first year. Why? Because Apple has identified an untapped and very profitable market niche for the MacBook Air that will expand its market share: fashion designers and luxury hospitality companies.

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アルマーニのスーツに似合うコンピュータ

あなたがラルフローロンやプラダの重役だとしよう。デルのラップトップを持ち歩くと考えただけでジンマシンがでる。彼らにとってスタイルやデザインは贅沢品ではない。仕事上どうしても必要なものなのだ。コンピュータ業界はこのテの顧客をこれまで無視してきた。ごつい箱のようなデザイン、ギークしか通じない専門用語、そもそもファッションの価値自体を一般的には否定してきたといえる。言い換えれば、アルマーニのスーツに似合うコンピュータがどれだけあったかということだ。

If you’re an executive at Ralph Lauren or Prada, the ugliness of carrying around a Dell laptop would give you hives. For these people, style and design isn’t a luxury; it’s an essential job requirement. And its a category of people whom the computer industry has not served well to date with boxy designs, techie jargon, and a general rejection of the value of fashion. Said another way, how many computers look good with an Armani suit?

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ホスピタリティ産業

フォーシーズンズのコンシエルジュ、W ホテルのレセプションについても同じことだ。ホスピタリティ産業では二つのコンピュータしかない。顧客と対面するフロントで使うものと、バックエンドで使う業務上のものだ。ほとんどコンピュータはバックエンドで使うことを目的に設計されている。しかし MacBook Air なら、フロントのガラス製デスクに置いてもピッタリフィットする。MacBook Air はまさにこのマーケットを念頭においてデザインされたものなのだ。

The same could be said for the concierge desk at the Four Seasons, or the reception area at the W Hotel. In the hospitality industry, there are two types of products: those for the front of the house (customer-facing) and those for the back of the house (production). Most computers are designed for the back of the house. But you could put a MacBook Air on a glass desk in any one of those front of house environments, and it would fit right in. It’s a product designed for this market.

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MacBook Air はピッタリだ

もう一度 MacBook Air について書かれた欠点なるものを見てみよう。すると、新しいラップトップを探しているファッション業界の重役が、いかに MacBook Air のデザインを気に入るかよく分る。

To give you a better concept of this target market, let’s do a quick rundown of the published MacBook Air deficiencies with a synthetic fashion executive who is looking for a new laptop, and has admired the design of a MacBook Air:

1)プロセッサが遅い 「スピードは十分だと思う。それに表計算ということなら、ちゃんとやってくれる連中がうちにはいるよ。」

– Slow processor: “Seems fast enough to me. I have people who can do spreadsheets if it doesn’t suit my needs.”

2)光学ドライブやイーサネットがない 「余分なものなんか持ち運びたくない。ケーブルや物理的メディアなんて20世紀の遺物だよ。」

– No optical drive or wired ethernet: “I don’t want to have to lug around extraneous baggage, and wires and physical media are so last century.”

3)バッテリー交換ができない 「バッテリー交換が必要になったらサービスに廻せばいいさ。アップルストアでやってくれるなんて結構じゃないか。」

– No user replaceable battery: “If I need it replacing, I’ll send it out. I like the fact that the Apple store will service it for me.”

4)値段が高い 「高いって? 私のスーツより安いもんだよ。」

– High price: “Expensive? It costs less than my suit.”

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イメージが重要な業界

スピードが何ギガヘルツとか、どんな機能があるかなんて、ファッションにとってはメじゃない。デザイン、エレガンス、ライフスタイル、それこそが重要なのだ。言い換えれば、本質的で美しいものに焦点を絞り、それ以外のものをすべて削ぎ落とすことが大切なのだ。ファッションやホスピタリティ業界、テレビ番組、その他イメージが重要な業界にとって、MacBook Air はまさにドンピシャリだ。

Fashion isn’t about gigahertz and feature sets. It’s about design, elegance, and lifestyle — said another way, it’s about focusing on a few, essential and beautiful things, and leaving everything else out. And for the fashion industry — and the hospitality industry and TV shows and countless other image-driven businesses — the MacBook Air will be right at home.

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確かにアップルが新たなビジネスマーケットを狙っているとするとこれはおもしろい。

力仕事の分野ではなく、ファッション系・ホスピタリティ系が狙い目だとすると、いささか中途半端に見える MacBook Air も、その輝きが一段と増すような気がするのだが・・・

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28件のフィードバック to “MacBook Air にはピッタリのマーケットがある”

  1. yskn Says:

    久しぶりにコメントを入れさせて頂きます。

    従来より薄くて軽いマシンであればそれで満足です。
    しかもこの薄さでバックライトキーボードが搭載されているのは
    かなりクールな事だと思います。
    割り切られたスペックでもいいと思います。
    ただSSD搭載モデルは僕には高いので様子見ですね。

  2. hiro Says:

    AIRは、SSE4をサポートするようなので、意外にも45nm世代のプロセッサみたいですね。
    バッテリーはドライバーひとつで簡単に交換出来るようです。といっても複数持ち歩いて
    その場で簡単に交換とはいかないようなのでモバイル派にとっては意味が無いかな?

    MacBook AirのDeveloper Note
    http://toshi3.cocolog-nifty.com/blog/2008/01/macbook_airdeve_29be.html
    MacBook Airのバッテリーは自分で簡単に交換可能
    http://taisyo.seesaa.net/article/79427339.html

  3. TORIO Says:

    Leopardはニュースにならなかった日本の一般メディアでも取り上げらたというのは、それ自体インパクトがあったと思います。

    新しい分野の開拓というのであれば、それはそれで良いこと。

    ホテル&病院や医院のフロントに置いてあれば、また行きたくなるようなオーラを持っているかも知れない。

  4. cables Says:

    うんたしかにAirに向かってあれこれいちゃもんつけるのは
    貧乏臭い…(笑)

    知り合いにファッション雑誌の編集の子がいて
    撮影とかいつも、小物が足りないと思った時に
    私物のMacBookをさりげなく写り込ますの。

    モデルのファッションよりも目を惹く場合が少なからずあります。
    ファンション雑誌の中でモデルの着ている幾多の服と渡り合えるパソコンは
    Mac以外にはありえないのです。

    ちなみに知人のスタイリスト達は(数人どころじゃないよ)全員Macです。

  5. masha Says:

    SSD付き構成で予約中です。シンプルでなによりも美しいですねー。
    スペックも大事ですけれど、存在そのものがどんな価値があるかが
    プロダクトに必要な要素だと思います。スペックからみるのであれば
    必要十分だと思いますし。

  6. Says:

    > うんたしかにAirに向かってあれこれいちゃもんつけるのは
    > 貧乏臭い…(笑)

    という cables さんの意見に私も賛成です。
    アップルの挑発的というか挑戦的な製品に対して、どんな使い道があるかとか、どういう場面に合うかとか、どうやったらあれこれ考える方が楽しいですよね。(もっとこういう製品にして欲しいという妄想も、それはそれで楽しいですが…)
    私は今年度はちょっと予算オーバーなので、将来の職場環境の Air 化に向けて Time Capsule を買っておこうかな、などと思っています。

  7. ひでぢ Says:

    「中途半端だし高すぎる。」
    これは初代のiPodが発売されたときにも言われたことですよね。
    私はAppleがニッチ市場を開拓するためにつくったというよりも、自分たちが欲しいものをつくったのだと思います。
    ジョブズたちAppleの人たちは、自分たちはこんなのが欲しいと思ったからiPodをつくったんじゃないでしょうか。
    Dellみたいな会社はともかく、Appleが万人受けをするものをつくってもしょうがないと思います。
    ダンプカー並みに積載能力があって、バスのように大勢乗れて、軽快なハンドリングのオープンカーとかに意味があるかのどうか。
    そういったものはたとえ実現できたとしても結局、価値がないんじゃないでしょうか。
    私はMacBook AirはきっとiPodのようになると思うし、そうなって欲しいと思います。

  8. cables Says:

    再度すみません
    Airで映像編集の要求を充たすには
    ビデオカメラ側が無線LANを備えたらいいのでは?
    って思ってしまいました。

    いまやHDDで映像を記録する時代です。
    映像をデータ単位でやりとりすれば
    無線でもできなくはない…と。

    でもそこまでしようとは思いませんが
    There’s something in the air.
    にはそこまで世界を変えてしまいそうな勢いもあるのかも。
    サードパーティーを動かすにはまず、核になるメーカーから野心的な製品を送り出す。
    いままでAppleが拓いて来た轍そのものですね。

    カメラから無線LANで映像取り込んで
    他のMacのドライブ借りてオーサリングした作品を焼き出す。
    デジカメも、iPodも、プリンタも無線LANで…
    ケーブルの消えたデジタルハブはとても有能に見えてきます。

    無線に一元化しすぎてついにはUSB殺し?みたいな世界も起きたりして…

  9. Sho Says:

    素晴らしい記事ですね。
    まさにその通りだと思いました。

  10. Webfool :: links for 2008-01-20 Says:

    […] MacBook Air にはピッタリのマーケットがある « maclalala […]

  11. applestore Says:

    SSE4をサポートするようなので – ok macbook.

  12. やす Says:

    初めまして、私もAirに関しては肯定的に考えました。ドライブがついてないとか、イーサネットなどが、はぶかれてるなど否定的な意見もたくさん載ってますし、値段も確かに高いとは思います。でもAirにはjobsの将来に対するピジョンがつまってる気がします。今ネットは日常的なレベルまでおりてきているし、ワイヤレス環境も徐々に増えつつあると思います。私達はどうしても自己所有したいものは別として、みんなで共有できるものはネットにおいておき、必要に応じて使う事が出来る環境にいます。いろいろ細かい問題はありますが、時代は所有から共有へ向かおうとしていると思います。少しでも自分の思いが伝われば幸いです。

  13. ちっ Says:

    これが、MacBookって名前じゃなかったら大賛成さ。

  14. links for 2008-01-20 « 個人的な雑記 Says:

    […] MacBook Air にはピッタリのマーケットがある « maclalala (tags: apple marketing) […]

  15. kapper Says:

    >Airで映像編集の要求を充たすには
    >ビデオカメラ側が無線LANを備えたらいいのでは?

    映像編集したければMacProあるいはMacBook Proを選択すればいいじゃない。

  16. Top Posts « WordPress.com Says:

    […] MacBook Air […] [image] […]

  17. Ken Says:

    もうこの市場って日本ではソニーが初めて(もう初代505が出てから10年)すでに分かっていると思います。だから、MBAが出て、何か新しいニッチだというわけでもなく(マックOSであるという違いはそれなりに大きいけど)、それなりに売れるのはもうすでに分かっているかなと。欲しい人は凄い欲しいし、そうじゃない人は買わない。それだけですよね。個人的には薄さというのはすでにいくらでも日本メーカーが頑張っていた世界なので、特に感動しないんですが。。。

  18. GEE Says:

    痛快!
    よくわかってらっしゃる・・・・・。

    そういう業界ってのは・・スタイリッシュ命なわけで。
    これをとっかかりにして、もっと進化してもらいたいもの。

  19. ぺをを Says:

    なるほど。 得心できる解説だと思います。

    個人的にはAirは、驚異的に薄いマシンということよりも「ワイヤレスを主体としたマシン」と考えるべきと感じています。
    それでも、いままでコンシューマーをずっと重視してきたAppleのラインナップに、ほんとうにこういうタイプのマシンが必要なのかと思う部分もありました。
    その点で、よく言われるようにひょっとするとCubeの二の舞になってしまうのだろうか、とも思ったのですが…

    この説ならば、むしろAirは必要な機種ですね(笑)

    いままで潜在的なニーズとしてはありながら、誰も作っていなかったマシンとして投入される機種、
    あるいはAppleのブランドイメージをさらに強化する広告塔的機種、ということでしょうか。

    あくまでもデスクトップの特定の場所にしか置かれず、第三者の目には触れにくいCubeとは、たしかに意味合いがかなり違いますね。

  20. mtbird Says:

    正直に言って、わたしは「いろいろ不満をいっている連中」のひとりでした。わたしが使うには、コストとスペックが釣り合わないように思えたからです。しかし、確かにこの記事の述べていることは的を射ています。なるほど、そういうことか、と思いました。すばらしい記事を紹介していただき、ありがとうございました。

  21. SuperOcean Says:

    はじめてコメントいたします。
    この記事は良いとこついているなぁ、と。こういった記事を待っていました。
    やはりAppleという会社は1997年に掲げたテーマ ”Think different !” の王道を行っているなぁ、と感じます。
    Airを見た時、Duo(ホビーで未だに健です)が浮かんできました。ドッキングステーションがワイヤレス化に進化したのかと・・ね。

  22. kachi Says:

    いつも楽しく読ませていただいています。はじめてコメントします。
    私の推測ですが、Jobsとしては、残りのイヤホン、USB、Micro-DVI、そして電源コードすらも無くしたかったのではないでしょうか。まさしく、Air、宙に浮く「スクリーン」と「キーボード」のイメージです。

  23. syo Says:

    考えてミリャー今回のは、そりゃそーだわ。と思ったよ。
    Airで、パワー使う仕事とかしないでしょ。

    思い出すと、
    初代iPodシャップルが出たときの割り切りの良さ。
    これがアップルだと思いましたね。

    当時は液晶があって、容量はこんだけで、低音が・・・と
    いろいろと機能がにあっても使わない、もしくは、あってもあまり使わない
    そんな機能が盛りだくさん。

    音楽を聞くのがそんなに難しいことなのかね?

    と、ジョブズ氏やデザイナーの意見が詰まった製品でしたよね
    だからボタンも操作も全てが簡単、シンプルで超大受け。
    でしたよね。

    そう考えると、Airに性能が不足していると、
    いうのは、なんか違うんじゃね?

    私は、デザイナーで営業などでよく外にいますが
    外でデザインはしません!!
    帰ってデスクトップでします。

    ちなみに外では
    マクブ15inchを使っていますが、リモートでデスクトップを操作して
    簡単な訂正程度しかしませんね〜。

    今回は買うかどうか、見てから決めますが(多分買う)
    コンセプトが違いすぎて、パワー云々では語っては恥かしいと思いますがね〜

  24. Macとえいちやin楽天広場 Says:

    「MacBookAir」はApple新戦略の第一弾・・他。

     こん○○は!!ホイヤーです。本日の更新は 「MacBookAirの神髄は「引き算のデザイン」」と「MacBookAirにはピッタリのマーケットがある」と「「MacBookAir」はApple新戦略の第一弾」他をご案…

  25. KOOPEE Says:

    まさにその通り!
    世界一薄いとか、いままでで一番軽いmacとかではなく。
    世界で一番美しいノートパソコン。

    薄さ、軽さだけなら他社のマシンに負けてますし、
    ヘビーなビジネス仕様ではないですが、
    この美しさ、斬新なシンプルさはmacならではのもの。

    去年秋に購入したiMac同様、
    スタイリッシュさが素敵です。
    ファッション業界のオフィスやショップ、ホテルなどに
    美しくなじむでしょうね。

    欲しいです!
    すばらしい記事の紹介ありがとうございました。

  26. Hiro Yama Says:

    kachi氏の言う通りだと思います。

    自分のiBookやMacBookの裏側も美しいのですが、
    バッテリスロットが無ければ完璧だと思ってました。
    (ノートの裏側が美しいのはAppleだけですね)
    だから、薄さや軽さというよりもバッテリスロットがないことが、
    個人的に最大の評価点です。

    「美しくない」という理由で、
    初代Macの128Kから拡張スロットを排したジョブズ氏です。
    iMac G3をファンレスにしたように、
    ジョブズ氏の求める理想は初代Macから変わっていないと思います。

    MacBook Airは、薄さや軽さの評価よりも、
    ジョブズ氏の理想の詰まったマシンとして評価すべきマシンだと思います。

  27. Shattered PLUS+ Says:

    MacBook Airの「Remote Disc」機能では、DVD視聴や音楽再生・読込は不可能?

    by APPLE LINKAGE and MacFixIt 久々の更新です。 い…

  28. Macbook Airの印象 « Still Life Says:

    […]  藤シローさんのmaclalalaの記事にある通りの人たちのためのものということなのかな…とりあえずの印象。 […]

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